
突如バンコク勤務を命じられた化学メーカーの研究員・ソウタは、渡航初日、大学時代に突然姿を消した初恋の人・カイと偶然の再会を果たす。あの頃、カイが奏でていた切ないメロディは、今もソウタの心の奥で繰り返し響いていた。カメラマンとして活躍し、趣味の音楽も続けていたカイは、思いがけない再会に心を揺らす。喧騒と静寂が交錯するバンコクの街で共に過ごすうちに、6年という空白の時間が次第に埋まっていく。
しかし、何事にも慎重なソウタは、かつてのカイへの叶わぬ片想いの痛みから、「この恋はきっと叶わない」と心に蓋をする。以前と変わらない態度で接しようとするが、異国で自立し、逞しくなったカイの姿に、思わぬ距離を感じてしまう。そして時折見せる、どこか物憂げな表情がソウタの胸に不安を募らせていく。
そんな中、カイが学生時代から作り続けていた、“好きな人に最初に聴かせたい”大切な歌がようやく完成し、初めてライブで披露するという噂を聞き、ソウタの胸に行き場のない想いが押し寄せる。
お互いを想いながらも、すれ違ってしまう二人。その両片想いの恋は、やがて──。